春休み初日、わたるは一人ぶらぶらと散歩をしていた。
まだ若干肌寒いが、冬の厳しい寒さは既に和らぎ、穏やかな陽が地面一体を照らしている。
こうして暖かい日の当たる道を歩いていると、昨日の卒業式に感じた物悲しい思いも癒されていくようだ。
わたるは、この春休みは一人静かに過ごそうと心に決めていた。
小学校卒業による大好きな友達たちとの別れ、そして月からの新しい中学校生活。
寂しさや不安や期待など様々な思いが入り混じった奇妙な感情が、わたるに一人になることを好ませたのだ。
まぁ簡単に一言で言えば『感傷的になった』ということであるが…
ともかくわたるは春の暖かい日差しの中、当てもなくただ一人散歩を楽しんでいた。
そう、本人としてはあくまでも『当てもなく』のはずだった。
ところが、ふと気づくとわたるは昨日まで通っていた小学校の門の前に立っているではないか。
やはり何か思うところがあったのだろう。
知らず知らずのうちに、年間元気に通い続けた懐かしい小学校の前までやってきてしまったのだ。
その門は休みだというのに、大きく開かれていた。
もっとも今日から休みとなったのは年生だったわたる達だけで、在校生は今日が学期の最終日だ。
懐かしさに学校の中に入ろうとも思ったが、わたるはそうはしなかった。
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